> コラム > 河合会長インタビュー#1(ヒトづくりでモノづくりに貢献する)

コラム

 

2022年6月に当会会長に就任した、トヨタ自動車株式会社Executive Fellow・河合満氏。生産現場と経営者として培ってきた知見をもとに、大きな環境変化を迎えているモノづくりの現場において、設備管理に求められる役割や人材育成について、3回にわたりお伝えいたします。

 

――モノづくりにおいて設備管理ができること

 

不良と故障をなくす

カーボンニュートラルという大きな課題については、国や企業が方針を出して対処すればいい、ということではなく、ひとりひとりがどれだけCO₂の発生を抑制できるかということだと考えます。

 

私が常々言うのは、不良と設備故障をなくすことが重要だということ。モノづくりでは、様々な場面でCO2が発生しますが、最終的に不良となってしまっては、製造工程で発生させたCO2が全て無駄になってしまいます。不良が出る原因はいくつかあると思いますが、設備が原因の不良が多いことが分かっています。不良を出さないためにも、設備の故障を防ぐことが必要です。

 

つまり、モノづくりにおいて一番身近に実行できるカーボンニュートラルは、「設備をしっかりメンテナンスして、効率よく動かして、不良を作らないこと」です。

これは、カーボンニュートラルのためだけではありません。設備が故障して不良を作ってしまっては、会社が儲かるわけはありません。会社が苦しいから保全マンを減らすのではなく、保全マンに設備のメンテナンスをしっかりと行ってもらい、設備を順調に稼働させ、効率の良いモノづくりができる体制を整備することは、経営にとって十分価値があります。

 

保全のノウハウを活かす

保全をしっかりと行っていくことで、故障がどんどん減少し、保全に必要な人員が少なくなることは、ひとつの理想なのかもしれません。そこで私は、「保全のプロであるだけでなく、新しい設備を導入する際に、保全のノウハウを活用した意見を言える人づくり」をしたいと考えています。

 

設備は常に進化させることが必要です。設備に合わせてラインづくりも全部変わります。新しい設備を導入するときに、ここはお金をかけよう、ここは簡素で良い等の判断ができるのは、以前の設備で苦労して問題を解決してきた経験がある人だけです。いくら技術が進歩しても、計算だけでモノづくりはできません。計算どおりに行かずに、不良が出ているのが現実です。

これからは、問題を解決してきた知見を伝承しながら、設備をどんどん進化させるような、モノづくりを総合的に考えることができる人材を作ることが、日本のモノづくりの競争力の源泉になると思います。


 

――モノづくりにおける当会の役割とは

 

人が全て

企業においては、「人・モノ・金」、それから「情報」が重要だと言われますが、人が金をどう使うか、モノをどう生かすか、情報をどう生かして、お金を、付加価値をどう上げるかという意味であり、「人が全て」だと考えます。

 

モノづくりにおいても、「人が全て」であり、人を育てることが重要です。現在は100年に一度の大変革期と言われ、様々な課題がありますが、それらを乗り越えていく原動力は「人」です。

IoTやAIの進歩が目覚ましいですが、「人がどうやって使うか」が重要であって、人が使われるようになってはいけません。「人の技能を常に高めて、それを技術に置き換えていく」というサイクルを続けていく。この順番を間違えてはいけません。

 

また、設備も人間と同じで、ずっと動き続けていれば、故障や異常が必ず起こります。故障や異常をどのように抑えるかがとても大事で、それができるのは人しかいません。これはまさに、当会が長年取り組んできた設備管理のことであり、今後どれだけ世の中が進化しても、絶対必要なものです。

当会は、「人を育てる」という根底の部分に長年携わっており、このことは、今後も変わらない、一番大事な原点だと考えます。人材育成を全て自前で行うことはなかなか難しい面もあると思いますので、ぜひ当会を人材育成の一助としてご活用いただきたいと思います。

 

 


 

 

河合満 略歴

1948年生まれ。1966年、トヨタ技能者養成所を卒業し、トヨタ自動車工業株式会社に入社。本社工場鍛造部長、本社工場副工場長、技監を経て、2015年専務役員に就任。2017年より副社長に就任し、現在はExecutive Fellowを務める。

2016年6月より公益社団法人日本プラントメンテナンス協会副会長、2022年6月より会長に就任。