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コラム

会長河合満が語る!「ヒトづくりでモノづくりに貢献する」~Part3 からくり改善が持つ可能性~

 

 

2022年6月に当会会長に就任した、トヨタ自動車株式会社Executive Fellow・河合満氏。生産現場と経営者として培ってきた知見をもとに、大きな環境変化を迎えているモノづくりの現場において、設備管理に求められる役割や人材育成について、3回にわたりお伝えいたします。

 

――からくり改善が持つ可能性

 

自ら成長できるからくり改善

からくり改善は、人がどんどん自分で成長できる、最良のツールだと思います。

自分が作ったからくり改善を褒められると、何とも心地よいものです。すると、「もっとできる」と考えるようになり、さらに進化できるのです。故障しても、自分で作っているから、すぐに直せる。問題点を改善するたびに、どんどん進化する。このようなサイクルが生まれるのです。

 

たくさんのからくり改善作品が集結する「からくり改善くふう展」の会場では、自分が作ったからくり改善をアピールするために、出品者が図面(作品の意図、アイデア等を紹介する資料)を配っています。図面を公開し、自らのアイデアを共有する、これは自信があるからこそできることです。「図面を見て皆さんがやってみる頃には、自分は次の改善に取り組んでいますよ」という自信が生まれているのです。

 

からくり改善×カーボンニュートラル

からくり改善は、カーボンニュートラルにも貢献します。エネルギーを使わずに生産する、動力を使わずに知恵と工夫でモノを搬送するからくり改善は、それだけでひとつのカーボンニュートラルです。

ひとりひとりが、からくり改善に取り組み、全部自分たちで考えて、自分たちで作る。これはカーボンニュートラルの最たる例と言えるでしょう。

 

「からくり改善くふう展」

 

「からくり改善くふう展」は、1994年に初めて開催して以来、昨年までに26回開催し、出品社総数は1,369社、事例総数は6,991事例で、参加者総数は12万2,400人に上ります。

また、コロナ前の2019年には、タイにて「アジアからくり改善くふう展」を開催しました。海外でも、からくり改善に一生懸命取り組む人たちがいて、ものすごく良い改善が行われていました。

 

「からくり改善くふう展」は、すべてがオープンです。他社の事例を見ることで、競争心が湧いたり、素直にアイデアを取り入れようと思ったりします。オープンであることによって、お互いを高め合うことができるから、出品が増えるとともに、中身がどんどん進化するのです。

 

からくり改善で「楽」をしよう

改善がうまく進まないという声を聞くことがありますが、「現場で仕事をしている人を楽にするためには、どのような改善が必要か」という観点で考えると良いでしょう。改善は効率を上げるためだけのものではなく、人の仕事を楽にするためのものでもあるのです。仕事が楽になるから、スピードが速くなり、生産性が上がるという発想です。

生産性を上げるためにこれをやる、利益を出すためにあれをやるのではなく、みんなを楽にして、その結果、利益が出る、値上がりしている電気代分を価格転嫁しなくて済む。一石三鳥で、しかも、カーボンニュートラル。からくり改善には大きな可能性があります。

 

 


 

河合満 略歴

1948年生まれ。1966年、トヨタ技能者養成所を卒業し、トヨタ自動車工業株式会社に入社。本社工場鍛造部長、本社工場副工場長、技監を経て、2015年専務役員に就任。2017年より副社長に就任し、現在はExecutive Fellowを務める。

2016年6月より公益社団法人日本プラントメンテナンス協会副会長、2022年6月より会長に就任。